トマト近況  トマトの味



 トマトの味にもいろいろありますよね。青臭い味、水臭い味、くせのない味、甘い味、濃い味……。その味を作るのは、トマトの品種だったり、土づくりの仕方だったり、栽培の方法だったり、これまたいろいろな要素がからんできます。岡本農園は、「JAグリーン 西店」(土成町内)で、赤テープのトマトと、青テープのトマト、二種類を直売しています。品種も、土作りも、農薬回数もまったく同じなのですが、いくつか栽培方法を変えてあるだけで、赤テープのトマトの方が濃く甘い味になっています。掲示板でも、そのことに触れましたが、今回はもっと詳しく違いを紹介したいと思います。

両トマトとも、実は同じハウス内に植えてあります。赤テープのトマトは、青テープのトマトの十分の一くらいの作付け。今年初めて、特別に作ってみました。青テープより、畝を若干狭くして、一畝に二列植えるところを、一列に植えました。誘引(トマトの樹の伸ばし方)の方法も変えました。写真は、赤テープのトマトの樹の様子です。上に伸ばした樹をUターンさせ、地面に近づいたところでまたUターンさせています。この誘引方法のいいところは、あまり葉っぱを摘葉しなくてもいいところ、悪いところは、下るときに樹精が落ちるところです。写真にポインタを置いてもらえば、今まで(青テープ)の樹の様子と比べてもらえます。こちらは、ある程度上に伸びると、斜め下に吊り直していきます(過去の近況“吊り直し”参照)。

収穫するまで、実の下のはっぱを三枚でも四枚でも残してやると、その分たっぷりの栄養が実にゆきます。青テープ(写真にポインタを置く)では、吊り直すときに下葉は邪魔になるので、むしってしまわなくてはなりません。ただ、葉っぱを多く残すと、採光が悪くなるという難点もあります。

実をより濃く甘い味にするために、もっとも大切なのは水管理です。赤テープトマトは、水をできるだけやらないようにしています。そうすることによって、風味も甘みもぎゅっと凝縮されるのです。写真は、赤テープトマトの根元の土の様子です。地表は乾燥してぽろぽろ、水分は地中深くにあり、根っこは少しの水を求めて深くはりめぐらされます。通常(青テープ)の水管理の土と比べてみて下さい(写真にポインタを置く)。
また、ビニールマルチの代わりにしいた稲わらは、地表の蒸散を邪魔せず、地表の温度が急変するのを抑えてくれています。
追肥の方法も違います。通常(青テープ)では、灌水チューブで液肥をトマトの根元にやります。赤テープの場合は、“穴肥え”といって、根元から離れたところに濃厚な肥料を注入します。そのほうが、根っこが肥料を求めて伸びるのです。また、濃厚な肥料のため、余分な肥料は吸えないしくみになっています。いってみれば、赤テープのトマトは、きびしく育てられたトマトなのです。作付けが少ないのと、ちょうど樹精が弱って、花が悪かった時期と重なるので、毎日店頭には並びませんが、一度食べてみてください。